ルードウィヒが好きだった

 ルードウィヒ、もう二ヶ月以上も前の舞台なんですね。すごく今更なルードウィヒの感想を、ようやく下書きから引っ張り出してきた自分の遅筆っぷりが憎いです。

 

まず自分が入った日メモ。

東京公演…11/27(初日)、11/30夜、12/6昼夜(楽)

大阪公演…12/13夜、12/14昼夜(大楽)

 

 橋本くんのルードウィヒの演技について。演じる…というか、彼はルードウィヒとして生きていました。時折アドリブなどの際に垣間見える橋本くんらしささえ、ルードウィヒというキャラクターの邪魔をしていなかった。毎日舞台の上でルードウィヒとして生きて、生き抜いて、その生涯を終えていました。

 河合くんの演技はそれとは逆、というか、すごく別物。モーツァルトユリシーズというキャラクターを綿密に作り上げ、計算し尽くされた演技をして…そして、それをごく自然に、河合くんという役者に馴染ませていました。自然なのに、殆ど河合くん寄りのアドリブも挟むのに、役作りに隙がなかった。

 

 橋本くんは回を追うごとに素晴らしくなっていきましたね。毎日の公演で、ルードウィヒとして生きた3時間の中で芽生えた気持ちや、役者の橋本くんとして感じたことを、きちんと噛み砕いて昇華して、次回の演技に加えていったのでしょう。偉そうなことを言っても、わたし自身は飛び飛びでしか観劇出来なかったのですが、毎回観劇するたびに進化していく橋本くんには感心してしまいましたし、どこまで成長するの!と驚いてばかりでした。

 橋本くんの、全身全霊でルードウィヒを生きようとする熱が、そのままルードウィヒというキャラクターの体温となり血潮となって。見る度に、わたしのなかで二人の境界が曖昧になっていきました。上手く言葉に出来ないけれど、ルードウィヒのことを、ルードウィヒという橋本くん、橋本くんというルードウィヒ、と思うようになりました。そしてそのどちらも、どちらもまとめて一つの存在として愛しくなっていきました。橋本くんだからこそ、ルードウィヒのことがこんなにも好きになれたんだろうなあと思います。そうしてどんどん好きになり…どんどん感情移入して観るようになり……どんどん泣く回数も増えました。ハンカチ握りしめて観てました。

 

 ところで、わたしは心のどこかで、橋本くんがどれだけやってくれるのか、少しだけ不安でした。雑誌のインタビューやジャニウェブなどを読むたびに、橋本くん大丈夫かな、という気持ちが募っていったんですね。とにかく見守るような思いで初日に臨んでいたような気もします。

 けれど橋本くんは、そんなネガティブな気持ちを吹き飛ばしてくれて、わたしをルードウィヒという存在の虜にさせました。河合くんと比べると、確かに余裕こそあまり感じられなかったかもしれませんが、本当に立派に主演を全うしたと思います。そりゃあ、河合くんも褒めまくりますよね!加入当初から教育係だった河合くんが、誰よりも一番近くでその成長を感じ、誰よりも一番感激していたことでしょう。嬉しかっただろうなあ、河合くん。

 

 そして、河合くん。河合くんは改めて、素晴らしい技量を持っているのだなあと感じました。二役を演じ分けること、それがブレないこと、けれどきっちり『河合郁人』の味も出すこと。河合郁人だもの、当たり前でしょう?と見せつけられました。サラリと。特にモーツァルト先生のインパクトはすごかった!出ている時間はそれほど長くなかったけれど、確実にその間は客の心をガッチリ掴んで、かつ弄び(笑)、そして風のように去っていきました。橋本くんが「一緒で良かった」と思える存在なのだと確かに感じました。それだけ安定感と心強さがあった…。見る側の自分も、2014年二度目の外部舞台(かつ今回は主演ではないですし…)ということで心に余裕があったのかもしれませんが。

 けれどその反面、もっといけるよね!?河合くん!とも思いました。ちょっとだけね。100%は見せてもらえたけれど、河合くんはもっともっと、200%持ってる…よね!?と。まあ、ファンの勝手な欲ですけどね…人とは勝手に夢を見るものなので…。けれどまだまだ期待出来る、っていうのも嬉しいことです。ポジティブ!もっともっと河合くんの演技を見たいです。色んな河合くんの演技を見たい。河合くんという役者への期待がさらに膨らんだ、一人二役でした。

 あと、全体的に笑いを誘うシーンの少ない舞台で、河合くんがお笑い要素を担っていたこと、演者としてお笑いを任されていたことも、嬉しかったです。結構重要な役回りだったんじゃないかなって。シリアスな場面の多かった舞台で、笑いの塩梅ってきっとすごく難しかっただろうし、プレッシャーもあっただろうなあ、と。それを感じさせない、毎回のアドリブでした。

 

 二ヶ月が経った今でも、ふと劇中の音楽を口ずさんでしまうことがあります。目を閉じて耳を澄ませれば、ピアノの音や二人の歌声が聞こえてきます。音楽だけではなくて、ルードウィヒの様々な表情だったり、甘い声だったり、悲痛な叫びだったり。そして勿論、ラストの第九、指揮するルードウィヒの姿、鳴り止まない客席の拍手。「喜劇は終わった」の声も、しっかりとこの耳が覚えています。わたしはあの一言が聞きたくて、苦悩を突き抜けて歓喜へと至った彼の生涯を見届けたくて、劇場へ足を運んでいたのかもしれません。ルードウィヒのことが好きでした。橋本くんの力で、これほどまでに好きになれました。だから、彼のことを、彼を演じる橋本くんのことを、この目で見届けたかったのです。

 

 舞台が終わって少しして、ふと橋本くんと河合くんのエピソードで思い出したことがあります。有名な、河合くんが橋本くんに言った「俺たちが裏で引っ張るから、お前は表で俺たちを引っ張れ」、という言葉。勿論その言葉はグループについての言葉なのですが、今回の舞台の二人はまさにそんな関係だったなあと、千穐楽のカーテコンコールに立つ二人の姿を見て思いました。舞台のセンターに立つ座長の橋本くんは本当に立派でしたし、その横に立って橋本くんを見守る河合くんは、不安を抱えていた橋本くんを裏で支え、ひっそりと引っ張っていたんだろうなあ…と。支え合い、高め合い、グループを飛び出した外部のお仕事で、そんな二人の姿を見ることが出来て嬉しかったです。

 

 素敵な舞台だったなあ、と思い出すたびにしんみりします。どれだけ時間が経っても、わたしのA.B.C-Zに関する思い出のなかで、きっととても大切で愛しい経験としてキラキラ光を放っているでしょう。そして、二人が次に舞台に立つ姿が、楽しみで堪らないです。今年もまた、新しい演技のお仕事が決まりますように。ルードウィヒを経た二人に、期待でいっぱいです!